公務員の給与アップ条例に対する反対を行った理由について

本日の企画総務委員会において「委員外議員の発言」という方法を取り、日本維新の会の立場から、条例案に反対致しました。なお、給与アップそのものに反対しているのではなく、根拠となる人事委員会勧告の仕組み、および現行の人事給与制度の改革が先送りされている点が是正されない中、給与アップはおかしいだろう、という趣旨です。発言全文は以下の通りです。


日本維新の会 上田かずきです。議案第129号「中央区職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例」について、日本維新の会を代表して反対の意見を申しあげます。

本議案について、私たちは公務員の待遇改善自体を否定する、という考えに立ってはいませんが、終身雇用と年功序列からの微修正を積み重ねた結果、改革を重ねている民間の人材マーケットと大きく乖離した、人事給与制度となっている現状から脱却する必要があると考えています。公務員制度を抜本的に改革し、能力・実力主義に則り活躍している人材に報いる人事給与制度への変革を進めることこそが重要であり、そのような根本的な課題解決を先送りにして、民間給与との比較を精緻に算出することにどれほどの意味があるのか、疑問に思っていることを冒頭申しあげておきます。

その上で私たちは、人事委員会勧告の基礎となる、職員と民間従業員の給与比較の方法について、大いに違和感を抱いております。企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の都内事業所を調査母集団としたということですが、経済産業省が行った令和3年経済センサスによれば、従業員規模50名以上の事業所の割合は3.3%とされています。つまり勧告は、ごく一部の上澄みともいえる民間との給与比較であり、それに加えて調査に、誠実に対応する余裕のある企業の数値を基礎としていることから、ここで行われている比較の方法に正当性があるとは評価できません。
人事委員会勧告は、労働基本権制約の代償措置として行われているものですが、労働三権のうち団結権については警察・消防以外の職員、つまり区の職員についていえば認められていると解されるものです。争議権は制約されていますが、団体交渉権は全面的にではないにせよ広範に認められているものであり、なればこそ労働組合との協議を経て本議案が上程されています。労働基本権の若干の制約に対する代償措置が、上位3.3%の民間企業との比較による公務員給与決定という理屈は、少なくともこの時代を生きる民間の感覚からは乖離しています。平成30年には人事委員会勧告に従わず、下げるべきとされた改定を拒否したことがありました。内容次第で従わないこともあり、従う時も差額支給者の解消など都合の悪い部分には従わないというダブルスタンダードも、区民の理解を得られるものではありません。
とはいえ、物価高の状況や給与を引き上げようという社会的な機運も踏まえれば、引き上げという結論自体に反対するものではありません。たとえば消費者物価指数をみると、全年同月比でプラスとなるのは26カ月連続で、日銀が物価目標としている2%を上回る高い水準が続いています。このような客観的な物価高を根拠とすれば、物価上昇に対する緩和措置を公務員だけが即座に反映できることに対する違和感は残っても、一定の理解は得られるものと思います。

なお、採用においては人事委員会も柔軟な対応を行い、多様な人材の確保に努めていることは評価しております。中央区においても、新任職員のおよそ10%は経験者採用である他、副参事など民間経験豊富な期間任用職員の登用なども行われています。しかし、評価制度については未だにそのような努力が見られません。例えば人事評価は5段階ですが、下から2つの評価は1%にも満たない人しか、当てはめられない点、努力や成果に関係なく、ほぼ全員が4号棒上がり続ける仕組みなど、明らかにおかしいルールがまかり通っています。管理職になりたいという人材が不足している現状も、人事評価制度の古さが影響を及ぼしていることは否めないと考えます。

まとめます。今回の提案について、その根拠とされている人事委員会勧告を根拠に引き上げるということを、私たちは賛成することはできません。また先ほど申し上げたように、勧告に従わなかった過去があることを踏まえても、勧告は区にとって金科玉条ではないと判断します。さらに、人事給与制度の諸問題を解決せず、単純に給与を引き上げることは、現在の財政状況を見ても、適切な対応とは到底思えません。

以上の理由から、議案第129号「中央区職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例」について、日本維新の会として反対といたします。


以上となります。
繰り返しになりますが、私たちは給与アップに反対するわけではありません。しかし、その根拠の妥当性が十分でなく、また誰が見ても旧態依然で、おかしい人事制度を維持し続けている現状はおかしいと思っています。「おかしいを、変えよう。あきらめを、やめよう」日本維新の会、上田かずきをこれからもよろしくお願いいたします。

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